親からアパートを相続したけど、管理しきれないから処分したい。
こんなご希望で相談して来られたクライアントがいました。
せっかく売却するのですから、できれば高い価格で売りたいものですね。
また収益を生み出さない負の財産となっているアパートなら、早めに手放した方が無難です。
今回はアパート経営では不可欠の、売却するタイミングについて解説していきます。
アパートを高く売るコツとあわせて読んでみてください。
高く売れるタイミング
満室状態
現状すべての住戸が埋まっていて満室なら、高く売れる可能性が高いです。
購入を希望する投資家からすれば、利回りの想定が立てやすいですし、購入資金の借り入れもしやすいですからね。
満室状態なら売らずに保有し続けるほうがいいんじゃない?という意見もありますが、高く売れるタイミングで手放すのが不動産投資の定石ですね。
地価が上がった
現在のように地価が上昇傾向にあるときは、売りのタイミングでもあります。
もちろん高く売れるというのが第一の理由ですが、固定資産税の負担が上がる前に売りたいという思惑もあります。
このような地価上昇トレンドでは、固定資産税も評価替えによって上がる可能性が高いです。
維持費のなかでも固定資産税の負担は馬鹿にならないですから、上がる前に売っておくとよいでしょう。
減価償却期間が満了した
すでにアパート経営をしている方なら、減価償却についてはご存じでしょう。
簡単におさらいしておくと、毎年の確定申告の際にアパート経営に関する経費として、建物の耐用年数に基づいた減価償却費を計上することができるのです。
- 鉄筋コンクリート(RC):47年
- 重量鉄骨:34年
- 木造:22年
建物の法廷耐用年数は、以上の通り定められています。
木造アパートの場合は22年で耐用年数満了を迎えますから、それ以後はアパート経営を続けても経費に減価償却費を計上できません。
中古で購入したアパートなら、もっと減価償却期間は短いですね。
減価償却費がなくなるとアパート経営の旨みが半減していまいますから、このタイミングで売却するケースも多いですね。
こんなアパートは早めに売ろう
不動産は持っているだけで出費があるものですから、場合によっては負の財産(負動産)になることがあります。
特にアパートではその傾向が強いですね。
そんなときは高く売るというよりも、なるべく早く売却したほうが良いでしょう。
そんな早く売ったほうが良いアパートの例を挙げてみましょう。
築年数が古い
ずっと昔から建っているアパートで入居者もいるけど、収支はトントン……
そんなアパートであれば、売却を検討してみましょう。
近年では熊本地震や北海道胆振地方の地震などで、建物の耐震性についての関心が高まっています。
単身者向けのアパートであっても、古い物件は敬遠されますね。
新規の入居者がいない、又は家賃を大幅に下げなければ入居者がいないという状況になってしまいます。
このようなアパートであれば、入居者がいるうちに売却したほうが良いでしょう。
ただ旧耐震基準といわれる昭和56年以前に建築されたアパートの場合、買い手が見つからない可能性があります。
その原因は購入したい人が、融資が受けられないから。
アパートローンを融資している金融機関の多くは、旧耐震物件では審査が下りないという現状があります。
そんな旧耐震アパートを売却するには、
- 耐震補強をして新耐震基準を満たす
- 入居者に立ち退いてもらい更地化する
という選択が考えられます。
いずれの方法も費用が発生することなので、慎重に検討してみましょう。
売却にかかる費用に注意しよう
アパートを売却するとなったとき、注意したいのが売却費用についてです。
不動産は買うとき・保有する・売るときのタイミングで、それぞれ発生する税金が異なります。
以下に挙げてみましょう。
譲渡税
アパートを売った売却益に対して、譲渡税(所得税・住民税)が発生します。
もし亡くなった人が住んでいた住宅だったり、相続人が住んでいる住宅であればマイホーム特例などの軽減策が使えます。
しかしアパートは収益物件なので、そのような軽減策は使えません。
売却した翌年の確定申告で、納税することになります。
印紙税
不動産の売買契約書では、契約金額に応じた収入印紙を貼ります。
これを印紙税といいますが、税額は以下の通り。
記載された契約金額 | 税額 | |
---|---|---|
10万円を超え50万円以下のもの | 200円 | |
50万円を超え100万円以下のもの | 500円 | |
100万円を超え500万円以下のもの | 1千円 | |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 5千円 | |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 1万円 | |
5,000万円を超え1億円以下のもの | 3万円 | |
1億円を超え5億円以下のもの | 6万円 | |
5億円を超え10億円以下のもの | 16万円 | |
10億円を超え50億円以下のもの | 32万円 | |
50億円を超えるもの | 48万円 |
不動産の売買などにかかる印紙税は、通常より低く抑えられています。
これは2020年3月までの軽減措置ですが、延長される可能性が高いですね。
(参考:No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置|国税庁)
登記費用
売買によって不動産の所有者が変わるので、法務局で所有権移転登記をしなければなりません。
この登記手続きは、通常は司法書士に委託します。
司法書士に委託する費用は各々の司法書士事務所によって異なります。
ただ相場として、土地1筆&建物1棟(固定資産評価額の合計1,000万円)の所有権移転登記の場合、4万円~6万円程度が目安です。
(参考:日本司法書士会連合会 | 司法書士の報酬)
契約金額が不動産の数によって費用が異なりますので、詳細は個別に確認してみてくださいね。
仲介手数料
不動産の取引では、通常は不動産業者が間に入って仲介を行います。
仲介とは、
- 売却物件の広告を出稿する
- 売り手・買い手のマッチング
- 契約書等の作成
- 契約締結の段取り
- 出入金の管理
- 司法書士への依頼
などが含まれます。
この仲介業者には、仲介手数料を別途支払わなければいけません。
仲介手数料は宅地建物取引業法に基づく国土交通省の告示(PDF)によって、上限が決まっています。
[st-mybox title=”仲介手数料の上限” fontawesome=”fa-calculator” color=”#74d0fd” bgcolor=”#e8f7ff” borderwidth=”0″ borderradius=”5″ titleweight=”bold”] 仲介手数料の上限=売買価格×3.24%+6万4800円[/st-mybox]
この仲介手数料の金額は、消費税が含まれます。
ちなみに上記は、消費税率8%のケース。
2019年に予定されている消費税引き上げのあとは、税率に応じて仲介手数料の上限もあがります。
また建物価格にも消費税がかかりますから、消費税引き上げ前には駆け込み需要が発生することでしょう。
相続してから3年以内に売ると譲渡税が安くなる
相続したアパートを3年後の12月31日までに売却すると、譲渡税の計算における取得費加算の特例が使えます。
この特例を使えば相続時に納めた税額のうち一部を、譲渡税計算の取得費にプラスすることができるのです。
この取得費加算の特例を使うと、どのくらいの節税効果があるのか?
詳しくはこちらの記事で解説しています。
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