借地上にある自宅建物が老朽化してきたから建て替えたい。
という場合は建築費だけでなく、地主に支払う承諾料も費用として見込んでおいてください。
自分が借りている土地なのに、どうして建て替えの承諾を得なければいけないの?
こんな疑問を感じた人のために、借地権における建替え承諾料の解説をしていきましょう。
ちなみに親の借地権を相続することになった人は、別の記事(借地権の相続について)をご覧ください。
建替え承諾料の相場は、更地価格の2~5%程度
建替え承諾料の支払額は、全国的に以下の通りです。
[st-mybox title=”建替え承諾料の相場” fontawesome=”fa-calculator” color=”#74d0fd” bgcolor=”#e8f7ff” borderwidth=”0″ borderradius=”5″ titleweight=”bold”] 更地価格の2~5%[/st-mybox]
なぜこの水準で決まっているかというと、家庭裁判所で申立が行われたときに、提示される承諾料の算定方法が同じだからですね。
ほとんどのケースでは更地価格の3%としています。
ただ更新料の支払い状況や地代によって、上下することはあります。
- 直近で更新料の支払いがあった
- 周辺相場よりも高い地代を払っている
このようなケースでは、建替え承諾料が減額されますね。
原則としては地主と借地人との話し合いで決定します。
ちなみに更新料の相場については、以下の記事で詳しく解説していますよ。
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鉄筋コンクリート造に建て替えるときは、より高額な条件変更承諾料となる
もし現状の建物が木造で、新しく建て直す予定のものも木造なら、前記の通り建替え承諾料を支払えば良いです。
しかし木造建物を鉄筋コンクリート造や鉄骨造で建て替えたいと考えているのなら、承諾料は高額になります。
それは建替え承諾料ではなく条件変更承諾料と呼ばれ、相場は以下の通り。
[st-mybox title=”条件変更承諾料の相場” fontawesome=”fa-calculator” color=”#74d0fd” bgcolor=”#e8f7ff” borderwidth=”0″ borderradius=”5″ titleweight=”bold”] 更地価格の10%[/st-mybox]
なぜ建物の構造を変更するだけで、こんなに承諾料が高額になるのでしょうか?
それは借地借家法第5条に規定されている借地契約の法定更新が関わっています。
借地上に建物がある限りにおいては、借地人が望めば借地契約を更新できます。
地主側はよほどのことがない限り、その更新を拒むことはできません。
木造建物よりも鉄筋コンクリート造・鉄骨造の建物のほうが堅固で、耐用年数も長いです。
したがって地主側としては、より長期間土地を貸さなければいけなくなるのですね。
その補償という意味で、より高額な条件変更承諾料が支払われるというわけです。
そもそも、なぜ建替承諾料が必要なのか
借地上に建っている建物を建て替えるときに地主の承諾を得なければならない、というのは民法や借地借家法に規定されていません。
しかしほとんどの借地契約書には建替え承諾料についての特約が付されていて、借地人が建て替えるときに支払う義務があります。
なぜこのような一時金が必要なのでしょうか?
それは先ほどの条件変更承諾料のところで触れた、民法・借地借家法による法定更新の規定が関係しています。
借地借家法第5条
- 借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、前条の規定によるもののほか、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない。
- 借地権の存続期間が満了した後、借地権者が土地の使用を継続するときも、建物がある場合に限り、前項と同様とする。
借地上に建物がある限り、借地人は契約更新や使用の継続が約束されているのですね。
なぜこのような規定があるかというと、不当な理由で借地人が追い出されることがないように、権利を保護するため。
ただ地主側としては、建物がある限り半永久的に居座り続けられるという問題になります。
その地主のデメリットを調整するために、建替え承諾料や条件変更承諾料の慣習が認められているのですね。
また建替えだけでなく増改築するときも、一定の増改築承諾料を支払うことがあります。
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建替え承諾料の支払いを拒否しても大丈夫?
前項のとおり借地契約書に建替え承諾料についての特約が記載されているのなら、借地人は支払い義務があります。
ただ契約書に記載されていない場合は、支払いを拒否しても大丈夫なのでしょうか?
先代から続く長期間の契約の場合、契約書そのものが見つからないなんてこともありますしね。
結論から言えば、建替え承諾料は支払ったほうが良いでしょう。
特約がない借地契約では、借地人が無断で建替えしたとしても法的に問題ありません。
ただ地主との人間関係は悪化することは間違いですね。
将来その借地権を第三者へ売却したり転貸したりするとき、地主から承諾をもらえない可能性が高くなります。
また借地権を地主に買い取ってもらう可能性もあるため、地主との友好関係は重要です。
裁判所の許可をもらうために借地非訟事件の申立をしたとしても、時間や費用がかかりますね。
そのような将来のトラブルを避けるためにも、適正な承諾料を支払っておくのは大事なことです。
契約とはつまるところ信頼関係に基づくものなので、あえてその信頼関係を壊すようなことはしないほうが良いでしょう。
建替え承諾書サンプルについて
建替え承諾料の授受にあたっては、建替え承諾書を書面で取り交わしたほうが良いでしょう。
以下に建替え承諾書のサンプルを付しておきます。
ご自由にダウンロードしてください。
ちなみにこの書面では、
- 土地を借りている人→土地賃借人
- 土地を貸している地主→賃貸人
となっています。
法律上の呼び方ですので、押さえておきましょう。
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