遺言書が2つ出てきたらどちらが有効?|書かれた日付を確認する

相続&不動産のトラブルあれこれ

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父が亡くなってから遺品を整理していたら、2つの遺言書が出てきました。

遺言書その1 遺言書その2
形式 公正証書 自筆証書
日付 平成29年3月21日 平成30年4月5日
内容 全財産の半分を妻に相続させる 全財産の半分を孫に相続させる

母は「公正証書だから遺言書その1が認められるべき」といい、
私の妻は「日付が新しい遺言書その2が優先される」と主張しています。

どちらが有効なのでしょうか?

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こんなご相談がありました。

他界した親族が複数の遺言書を残している場合に、遺族はどのようにすればいいか迷うこともあるでしょう。
遺言書は、相続などについて他界した人の意思が記載されている重要な書類です。

今回は遺言書を発見した場合や、複数の遺言書がある場合についての対応を解説していきます。

遺言書が2通以上見つかった場合にはどうすればいい?重要なのは日付

遺言書の記載内容は、相続などに関して効力を有する大切な文面です。
遺言書の内容に沿うことで、遺産相続に関わるトラブルを防ぐことができます。

しかし、遺言書が2通以上存在するようなケースもあります。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

遺言書を書いた後に、書き方の間違いがわかり、改めて遺言書を書き直したケースが考えられます。
書き直す前の遺言書がそのまま残っていると、結果的に2通存在することになります。
また書き方は間違えていなくても、遺言書の内容を修正したケースもあります。
修正する前のものを処分し忘れ、その結果複数枚の遺言書が残ってしまったのです。
遺言書は書き方が厳格に決まっており、このように何度も修正したり書き直したりするケースもあります。

遺言書が2通以上見つかった場合に、どの遺言書が正式なものとして判断できるのでしょうか。

重要なのは、遺言書に記載されている日付です。

遺言書には署名と押印の他に、遺言書を作成した日付の記入も必須です。
民法第1023条によって、最後に書かれた日付のものが有効な遺言書と判断されます。

第1023条
1 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。

引用元:民法第1023条 – Wikibooks

つまり、相続人の立場から見れば最新の日付のものが有効な遺言書となるわけです。
なお、日付の記載がない遺言書は無効になります。

遺言書の種類について

遺言書には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」があります。
自筆証書遺言は遺言者自ら作成したものであり、公正証書遺言は公証人によって作成されたものです。

自筆証書遺言と公正証書遺言に効力の違いはありません

残された遺言書が自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類あったとしても、どちらかが優先されるわけではありません。
この場合も日付によって判断されることになり、遺言書の種類に関係なく、最新の日付のものが遺言書としての効力を持ちます。

もちろんその遺言書が正しい形式で書かれていることが条件です。
公正証書遺言と聞けば、何か公的で優先されると思ってしまいがちですが、実際はそんなこともないのですね。

自筆証書遺言を発見した場合は必ず家庭裁判所で検認すること

自筆証書遺言の中身を見たいと思っても、勝手に開封することはできません。
その場合は家庭裁判所で検認の手続きをする必要があります。
勝手に開封した場合は罰金が課せられるため、注意が必要です。

なぜ勝手に開封できないかといえば、遺言書が改ざんされることを防ぐ意味合いがあります。
相続人の一人が勝手に遺言書の内容を書き換えるようなことがあれば、遺言者の意思が反映されなくなってしまいます。
そうなれば遺言書自体の意味がなくなるため、その管理や扱いには厳重な公正性が求められます。
家庭裁判所という公の場で開封することによって、不正を防ぐことができ、公正性が保たれることになります。

したがって自筆証書遺言を発見した場合は、家庭裁判所に遺言書を提出する必要があります。
検認の際は、原則として相続人の全てが立ち会い、その状況で遺言書を開封し中身を確認します。
こうすれば改ざんや偽造の心配はありませんから。
立ち会いに参加するかどうかについては、相続人本人の判断に任されています。

家庭裁判所を介さずに、勝手に遺言書を開封した場合でも、遺言書自体の効力がなくなるということではありません。

また、公正証書遺言の場合は、家庭裁判所での検認の必要はありません。
そのまますぐに相続手続きを進めることができます。
(参考:裁判所|遺言書の検認

まとめ

このように遺言書の取り扱いにはしっかりした法律上の決まりがあるため、事前によく理解しておく必要があります。
特に遺言書が複数枚あったら誰しも困惑しますが、どれを採用するかについては、日付を重視した法律上の定めがあるため知っておくと便利ですね。
このような理由から、日付のない遺言書が無効である理由も頷けます。

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