実家の農業を継ぐことになったけど、土地の相続税が払えないかもしれない……節税対策はあるの?
そんな心配をしているなら、安心してください。
親の農業経営をそのまま引き継ぐのなら、相続税は実質ゼロになる可能性が高いです。
今回は農家を保護するための施策、納税猶予の特例について解説していきましょう。
納税猶予の特例とは
代々農業を営んでいる農家が、相続のたびに莫大な相続税を負担するとしたら大変ですね。
農業を続けることができなくなります。
そこで農業を営んでいる農家に対しては、農地の相続税負担を軽くするという施策が納税猶予の特例です。
この特例は猶予となっているので、あくまでも納税を繰り延べるという措置です。
しかし農業を続けている限りはずっと猶予されていて、猶予を受けていた人が亡くなった場合は、税負担が免除されます。
したがって実質は相続税ゼロになる、農家にとってはありがたい特例なのですね。
No.4147 農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例|国税庁
納税猶予されるための要件
納税猶予を受けるための要件は以下の通りです。
亡くなった人が死亡するまで農業を営んでいた
まず亡くなった人が、ずっと農業を営んでいたという事実が必要です。
この農業を営んでいたというのは、自分で耕作していたということ。
ただそれ以外にも特定貸付け(農業経営基盤強化促進法)も当てはまります。
また亡くなる前に体が弱ったため、子どもに農業を任せていたという人の場合はどうでしょうか?
その場合は、子どもに農地を生前一括贈与をしておけば、相続税の納税猶予を受けられます(贈与税も免除)。
相続した人が農業経営を続ける
農地を相続した人は、農業を続けることが猶予を受けるための条件です。
この相続人による農業経営は、相続税の申告期限(亡くなってから10ヶ月以内)に開始しなければいけません。
相続税の申告期限までに遺産分割協議が済んでいる
納税猶予のためには遺産分割協議をして、申告をする必要があります。
したがって申告期限までに誰がその農地を相続するのか?ということを決定しておきましょう。
もちろんその相続人が農業を続けるという前提で協議を進めます。
大都市圏の農地は猶予が受けられない可能性も
もし相続した農地が以下の地域にあるなら、納税猶予が受けられない可能性があります。
茨城県 | 龍ケ崎市、水海道市、取手市、岩井市、牛久市 |
---|---|
埼玉県 | 川口市、川越市、浦和市、大宮市、行田市、所沢市、飯能市、加須市、東松山市、岩槻市、春日部市、狭山市、 羽生市、鴻巣市、上尾市、与野市、草加市、越谷市、蕨市、戸田市、志木市、和光市、桶川市、新座市、朝霞市、 鳩ヶ谷市、入間市、久喜市、北本市、上福岡市、富士見市、八潮市、蓮田市、三郷市、坂戸市、幸手市 |
千葉県 | 千葉市、市川市、船橋市、木更津市、松戸市、野田市、成田市、佐倉市、習志野市、柏市、市原市、君津市、 富津市、八千代市、浦安市、鎌ヶ谷市、流山市、我孫子市、四街道市 |
東京都 | 特別区、武蔵野市、三鷹市、八王子市、立川市、青梅市、府中市、昭島市、調布市、町田市、小金井市、小平市、 日野市、東村山市、国分寺市、国立市、福生市、多摩市、稲城市、狛江市、武蔵村山市、東大和市、清瀬市、 東久留米市、保谷市、田無市、秋川市 |
神奈川県 | 横浜市、川崎市、横須賀市、平塚市、鎌倉市、藤沢市、小田原市、茅ヶ崎市、逗子市、相模原市、三浦市、秦野 市、厚木市、大和市、海老名市、座間市、伊勢原市、南足柄市、綾瀬市 |
京都府 | 京都市、宇治市、亀岡市、向日市、長岡京市、城陽市、八幡市 |
大阪府 | 大阪市、守口市、東大阪市、堺市、岸和田市、豊中市、池田市、吹田市、泉大津市、高槻市、貝塚市、枚方市、 茨木市、八尾市、泉佐野市、富田林市、寝屋川市、河内長野市、松原市、大東市、和泉市、箕面市、柏原市、 羽曳野市、門真市、摂津市、泉南市、藤井寺市、交野市、四條畷市、高石市、大阪狭山市市 |
兵庫県 | 神戸市、尼崎市、西宮市、芦屋市、伊丹市、宝塚市、川西市、三田市 |
奈良県 | 奈良市、大和高田市、大和郡山市、天理市、橿原市、桜井市、五條市、御所市、生駒市 |
愛知県 | 名古屋市、岡崎市、一宮市、瀬戸市、半田市、春日井市、津島市、碧南市、刈谷市、豊田市、安城市、西尾市、 犬山市、常滑市、江南市、尾西市、小牧市、稲沢市、東海市、尾張旭市、知立市、高浜市、大府市、知多市、 岩倉市、豊明市 |
三重県 | 四日市市、桑名市 |
上記の特定市の市街化地域内にある農地を相続した場合は、納税猶予の特例が使えません。
これらの地域は宅地化が促進されているので、農地は保護されないのですね。
しかし、
- 生産緑地地区
- 田園住居地域
のいずれかに入っていれば、例外的に納税猶予を受けられます。
申告手続きで農地を担保提供しなければならない
納税猶予を受けるには、相続税の申告手続きで担保を提供しなければいけません。
この制度はあくまでも納税の猶予なので、実際にかかるであろう相続税額プラス猶予期間の利子税に相当する担保を提供するのですね。
実際には納税猶予の対象となる農地の全部を担保とすることが多いです。
3年ごとの継続届出を忘れずに
猶予は最初の申告手続きだけでは、継続しません。
3年ごとに継続届出書というものを税務署に提出する必要があります。
この継続届出を怠ると、納税猶予が解除されて相続税プラス利子税が発生しますから、注意してくださいね。
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