農地を相続したら農業委員会に届出する|売却や宅地転用するときはどうなる?

不動産の種類別にみる相続のポイント

農地を相続したら、相続税の申告手続きを済ませれば大丈夫。

そんなことはありません。

農地を相続したら、相続税以外の手続きも必要です。

ここでは農地法に基づく、相続した農地の届出の仕方について見ていきましょう。

農地の権利は農業委員会によってチェックされる

農地を相続などで所有権移転したり他人に貸したりする場合は、農業委員会というところでチェックを受けなければいけません。

農業委員会は乱開発で農地が減ったり環境が悪化したりすることを防ぐため、市町村の農家たちで作られている組織です。

農地の権利移動があるときは、農地法に基づいてこの農業委員会がチェックする仕組みになっているのです。

ただこのチェック方法には、届出と許可の二種類があります。

  • 届出:農業委員会に届出書を提出すればOK
  • 許可:農業委員会の審査を通過すればOK

という違いがあります。

許可の方はかなり厳しい審査をされるので、農地の売買が難しい原因のひとつになっているのですね。

農地を相続したら農業委員会に届出する

農地を相続で取得した場合は、その農地がある市町村の農業委員会に届出します。

この届出は農地法に以下の通り規定されているので、必ず提出しなければいけません。

第三条の三

農地又は採草放牧地について第三条第一項本文に掲げる権利を取得した者は、同項の許可を受けてこれらの権利を取得した場合、同項各号(第十二号及び第十六号を除く。)のいずれかに該当する場合その他農林水産省令で定める場合を除き、遅滞なく、農林水産省令で定めるところにより、その農地又は採草放牧地の存する市町村の農業委員会にその旨を届け出なければならない。

引用元:農地法

ただしこの場合は届出なので、基本的には書類を提出すれば大丈夫。

売買などで農地を取得したときは、届出ではなく許可が必要になります。

農業委員会は市町村役場にある

農業委員会ってどこにあるの?と思われるかもしれませんね。

通常は市町村役場に窓口が設置されています。

ただし、市町村に農地がない(または少ない)場合は、農業委員会が設置されていないケースもありますね。

まずは市町村役場に電話で問い合わせしてみましょう。

納税猶予を受けるときは農業委員会に必要な書類を発行してもらう

相続した人が農業を続けるときは相続税の納税猶予の特例が適用される、というのは別の記事で解説していました。

農地の相続税を節税するには【納税猶予の特例】を活用する|税負担がゼロに
実家の農業を継ぐことになったけど、土地の相続税が払えないかもしれない……節税対策はあるの? そんな心配をしているなら、安心してください。 親の農業経営をそのまま引き継ぐのなら、相続税は実質ゼロになる可能性が高いです。 今回は農家を保護するた...

この納税猶予を受けるためには、農業委員会で相続税贈与税の納税猶予に関する適格者証明という書類を発行してもらう必要があります。

この相続税贈与税の納税猶予に関する適格者証明を相続税の申告手続きのときに添付しますから、大事なものですね。

また納税猶予を3年ごとに継続するためには、同じく農業委員会から引き続き農業経営を行っている旨の証明を発行してしもらいましょう。

相続した農地を売ったり貸したりするときは、農業委員会の許可が必要

相続のときに農業委員会に届出をしておけば、その先もずっとOKというわけではありません。

  • 農地を売却する
  • 他人に貸す

このような場合は、農業委員会の許可が必要です。

第三条

農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。

引用元:農地法

この許可申請をすると、農業委員会での審議を経て許可書が発行されます。

もしこの許可書が発行される前に売買契約などを行っても、無効となることに注意してください。

農地を宅地化するときも許可が必要

また他人に売ったり貸したりしなくても、農地を宅地に転用することがあるかもしれません。

  • アパートやマンションを建てる
  • 商業施設を作る

こんなときは農地法第四条によって、農業委員会の許可を受けなければいけません。

農地を宅地転用することを無条件で認めてしまうと、乱開発の原因になってしまうからですね。

 

[st-mybox title=”市街化地域は届出のみ” fontawesome=”fa-info-circle” color=”#e54d03″ bgcolor=”#fff0e8″ borderwidth=”0″ borderradius=”5″ titleweight=”bold”]

市街化地域内の農地転用は、届出だけでOKです。

もともと市街化地域は宅地化を促進する地域なので、農地転用しても差し支えないからですね。

[/st-mybox]

 

農地を不動産デベロッパーに売るときも許可が必要

相続した農地を処分するために、不動産デベロッパーに売る時も許可が必要です。

不動産デベロッパーは農地を宅地開発するために取得するので、農地法第五条における転用のための権利移動に当たるためです。

この制限があるおかげで、農地を処分するのは大変になっています。

デベロッパー側も許可申請に手間がかかるので、農地を買いたがらない傾向がありますね。

しかし前項と同様に、市街化地域内の農地であれば届出だけで済みます。

農地は

  • 市街化地域内か?
  • そうでないか?

によって取り扱いが異なりますので、注意してください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました