親が亡くなって相続するというと、銀行預金や不動産といったプラスの資産を想像しがちですよね。
ただ実際には、相続はプラスの資産だけとは限りません。
借金などのマイナスの資産(負債)があれば、まとめて相続することになります。
自分に身に覚えのない借金を背負うなんて、できれば避けたいですよね。
今回は負債を相続したくない人のための、相続放棄のやり方についてお伝えしましょう。
その相続は大丈夫?借金はマイナスの遺産を背負うことになる
相続の対象となる負債は、以下のようなものがあげられます。
- 金融機関などからの借金
- 住宅ローン残債
- クレジットカードの未払金
もし自宅の不動産などがあっても、これらの負債額が上回っている可能性もあります。
そんな負の遺産を相続したくない!のなら、相続放棄の手続きをしましょう。
[st-mybox title=”消費者金融の借金が戻ってくる?” fontawesome=”fa-info-circle” color=”#e54d03″ bgcolor=”#fff0e8″ borderwidth=”0″ borderradius=”5″ titleweight=”bold”]
ただし消費者金融で長年借りていたのなら、過払い金返還請求で過去の借金が戻ってくる可能性もあります。
そんなときは債務整理専門の弁護士事務所などで相談してみましょう。
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相続放棄は3ヶ月以内に手続きすること
相続放棄するための手続きは、急いでやらないといけません。
手続きは家庭裁判所に申述書というものを提出するのですが、期限は相続の開始があったことを知ったときから3か月以内。
相続の開始があったことを知ったときという表現が分かりにくいですが、ほとんどのケースでは亡くなった日と考えれば良いでしょう。
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相続の開始があったことを知ったとき=被相続人が亡くなった日
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申述書が受理されて家庭裁判所の審査を経て、正式に相続放棄が完了します。
ただ公的に相続放棄したことを証明するには、相続放棄申述受理証明書というものを家庭裁判所で発行してもらう必要があります。
こんなときは注意❌相続放棄できないケース
亡くなってから3カ月以内に手続きすれば、相続放棄はほとんど認められます。
しかし以下のようなケースでは、相続放棄ができないこともあるので注意しておきましょう。
- 相続財産である不動産を売却した
- 遺産分割協議を済ませた
- 相続財産である自宅の取り壊しをした
これらの行為をした場合、相続する意思があると見なされてしまいます(法定単純承認)。
自分で相続放棄の手続きをしてみる
相続放棄は司法書士などの専門家に依頼することもできますが、自分でも十分にできます。
先ほどご説明したとおり、相続放棄は基本的には家庭裁判所に申述書を提出するだけ。
申述書は裁判所の書式の通り記入するだけなので、あとは他の必要書類を用意しておきましょう。
相続放棄に必要な書類
申述書の他に必要な書類は、基本的に以下の2つ。
- 亡くなった人の住民票の除票または戸籍の附票
- 相続放棄する人の戸籍謄本(最新のもの)
加えて申述人の属性によって、以下の追加書類が必要です。
申述人の属性 | 必要書類 |
---|---|
配偶者 | 亡くなった人の死亡が記載されている戸籍謄本 |
子ども | 亡くなった人の死亡が記載されている戸籍謄本 |
代襲相続した孫 | 亡くなった人の死亡が記載されている戸籍謄本 本来の相続人(子)の死亡が記載されている戸籍謄本 |
父母など直系尊属 | 亡くなった人の出生時から死亡までの戸籍謄本 亡くなった人の子どもが亡くなっている場合は、その子どもの出生時から死亡までの戸籍謄本 直系尊属で亡くなっている人がいる場合、その直系尊属の死亡が記載されている戸籍謄本 |
兄弟姉妹 | 亡くなった人の出生時から死亡までの戸籍謄本 亡くなった人の子どもが亡くなっている場合は、その子どもの出生時から死亡までの戸籍謄本 直系尊属の死亡が記載されている戸籍謄本 代襲相続した甥・姪の場合、本来の相続人である兄弟姉妹の死亡が記載されている戸籍謄本 |
申述書を自分で書く
家庭裁判所に提出する申述書のデータは、裁判所HPからダウンロードできます。
記載例もあわせてダウンロードしておくと良いでしょう。
この申述書で重要なポイントは、相続の開始を知った日です。
一番無難なのは、被相続人の死亡の当日ですね。
前半で触れたとおり、亡くなった日=相続開始となるわけです。
問題となるのは、亡くなってから日にちが経ってしまったケース。
例えば別居して疎遠になっていた父親が亡くなっていたのを、後から知ったというケース。
この場合は死亡の通知を受けた日にマルをして、その日付を記載しましょう。
ただ裁判所が認めてくれるかどうかは分かりません。
繰り返しになりますが、相続放棄ができるのは相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内。
通常であれば亡くなった日=相続開始となるので、死亡から時間が経ったうえでの相続放棄は例外的な扱いになるからです。
もし死亡から3カ月を超えた時点で相続放棄手続きをしたいのなら、法テラスなどで専門家に相談するのが無難でしょう。
相続放棄すれば借金を返す義務はなくなる
相続放棄の手続きが済んでいれば、その人は借金を返す義務はなくなります。
もし債権者や借金取りから返済するように迫られても、応じる必要はありません。
ここで役に立つのが、家庭裁判所で発行してもらう相続放棄申述受理証明書。
この相続放棄申述受理証明書(写しでも可)を債権者へ提出すれば、それ以上は請求されることはありません。
遺産を管理する義務は残る
相続放棄したから、もう関係ない!とホッとしているかもしれませんが、義務がまったく無くなったわけではありませんよ。
民法940条では、相続放棄をしたあとの財産管理義務について規定されています。
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
ここで問題になるのが、誰も住まなくなって放置されている家屋や土地。
相続放棄した後に他の相続人が現れるまでは、自分が管理する責任があるのです。
もしその家屋が老朽化で倒壊して、隣の家に被害があったらどうでしょう?
当然ながら管理義務がある人が責任を取らなければなりません。
そのようなアクシデントが起こらないように管理を続けるか、売却するかの選択をする必要があるでしょう。
プラスとマイナスどちらが多いか不明なときは限定承認も検討してみよう
借金が結構あるらしいんだけど、本人じゃないと額が分からない……
というケースもよくあります。
そんなときは、プラス(資産)とマイナス(負債)のどちらが多いのか分からないですよね。
プラスの資産があれば受け取りたいけど、多額の借金は背負いたくないと考えるなら限定承認という方法を検討してみましょう。
限定承認とは相続する意思はあるけども、プラスの資産を超えるような負債は免除されるというものです。
図の通り相続したプラスの資産と同等までの負債は受け入れますが、資産を超える負債は負担しないというもの。
こうしてみると限定承認にメリットがあるように思えますが、実際に限定承認をするのは大変です。
- 相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に、相続人全員で申述する
- 限定承認をしたあとに、官報で公告する
という手順を踏まないといけません。
特に相続人が多い場合、その全員が同意して申述書を提出するというのは至難の業です。
もし限定承認を検討するのなら、早めに専門家に依頼する方がよいでしょう。
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