相続登記手続きって自分でできるの?手続きの流れや費用の相場について

不動産を相続した後は、法務局で登記手続きをしなければいけません。

この登記手続きは司法書士に依頼して行うのが普通ですが、相続人が自分で行うことができます。

自分で手続きした方が費用が安く済む、ということで自分で登記手続きをしたいという方もいるかもしれませんね。

ここでは実際にどのように相続登記をするのか、費用がいくらくらいかかるのか?という点について説明していきたいと思います。

相続した不動産の登記って、具体的に何をするの?

相続した不動産の登記手続きについては、必ずやるものとして所有権移転登記があります。

また分割方法によっては、分筆登記の手続きも必要になってきます。

所有権移転登記とは

所有権移転登記とは、建物や土地の所有者が変更になったとき行う登記手続きです。

普通の売買でも所有権移転登記を行いますが、相続の場合でも亡くなった人(被相続人)から相続人に所有権が移るので、所有権移転登記をしなければいけません。

相続の結果複数の相続人が一つの不動産の所有者となる場合は共有と呼ばれ、それぞれの相続人の持分割合が記載されます。

ここに図

なお過去の相続が反映されていない場合は、遡って所有権移転登記を行うことになります(数次相続)。

ここに図

分筆登記とは

分筆登記とは一つの地番(区画)の土地を複数に分割する
遺産分割協議の結果、相続した土地を分割してそれぞれの相続人に相続させる場合にはまずこの分筆登記で土地を分割して、その後それぞれの土地の所有権移転登記を行います。

ここに図

場合によっては地目変更登記なども行う

その他に相続によって行われる登記手続きには、以下のようなものがあります。

例えば相続した農地を宅地化して売却したいときなどは、地目(土地の種類)を宅地に変更する地目変更登記をします。

相続した不動産の登記手続きは自分でもできるけど、とても大変です……

相続による不動産の登記は、相続した人の名義で申請することとされています。

したがって相続人自らが相続による登記手続きをすることは可能です。

ただしこの登記手続きというのは非常に面倒で、知識や経験のない方にはかなり大変と感じるかもしれませんね。

また不動産の登記手続きは管轄の法務局で行うので、相続した土地が居住地から離れている場合は管轄の法務局に郵送で申請することもできますよ。

ここに内部リンク

登記手続きをする流れ

まず相続する不動産を確認する

登記されている不動産には他と区別するための番号があり、土地なら地番、建物なら家屋番号と呼ばれています。

この地番や家屋番号というのは、郵便物などに書く住所(住居表示)とは違うものなので、注意してください。

地番や家屋番号は過去の契約書や権利証を見ればわかりますが、そのような資料がない場合には公図やブルーマップと呼ばれる資料を活用して調べることになります。

確認した不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)を取り、現在の所有者を確認

相続する不動産が確定できたら、現時点での所有者を確認するためにその不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)をとります。

登記事項証明書は管轄の法務局で発行してもらうのが基本ですが、最近ではインターネット上で登記事項証明書を確認できるサービスもあるので、そちらを利用しても良いでしょう。

登記・供託オンライン申請システム 登記ねっと 供託ねっと

現在の所有者が亡くなった人ならばOKですが、異なっていれば数次相続などの可能性を考えなければならないので、面倒なことになりますね。

その他にも例えば、亡くなった夫と存命中の妻の共有(1/2づつ)になっていたなら、夫の持ち分についてのみ所有権移転登記をするといったケースが考えられます。

また所有権以外の権利がついているケースも考えられます。
例えば購入時に設定された住宅ローンが残っていた場合、その不動産には抵当権が設定・登記されています。

この抵当権も亡くなった人の債務なので、相続人に債務が移転することになります。
当然登記手続きも必要なので、債権者(銀行など)と相談して別途手続きをしなければなりません。

戸籍謄本や住民票など必要な書類を揃える

登記手続きを行うには登記申請書とともに、いくつかの必要書類を添付しなければいけません。

まず亡くなった人の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)が必要です。
また亡くなった人の現住所が本籍地と異なっているなど、場合によっては住民票の除票や戸籍の附票の写しなども必要になります。

次に相続の関係を明らかにするために、相続する人全員の戸籍謄本または戸籍抄本と住民票の写し(マイナンバーの記載なし)が必要です。

これらの必要書類を発行する費用は自治体ごとに異なりますが、一通あたり200~300円程度。
本籍地の自治体や住民登録されている自治体で発行してもらう必要があります。
相続する人たちが離れた地域に住んでいる場合などは、必要書類を集めるのは大変な作業ですね。

登記申請書の書き方の例

登記手続きのメインとなる登記申請書の書き方については、下記の法務局のサイトが参考になります。

不動産登記の申請書様式について:法務局

遺言の有無や遺産分割協議によっても記載内容は異なりますので、気をつけましょう

こうして無事に書類が揃ったら、法務局に提出しましょう。
基本的には相続する不動産がある地域の管轄法務局の窓口に直接出向いて提出するのですが、郵送でも受け付けてもらえます。

ただしこの登記手続きですが、申請書の表記違いなどで差し戻されるケースも非常に多いです。

私自身も嘱託で登記手続きを行ったことがあるのですが、法務局の担当者によっては非常に細かいチェックをしますので、なかなか申請書を受理してくれないという経験があります。

例えば土地の地番が「東京都千代田区中央一丁目2345番」だったとしたら、「東京都千代田区中央1丁目2345番」と書いてあるから修正してください!ということもあります。

色々なお役所と仕事で付き合ってきましたが、法務局はその中でも非常にお堅いところだと言えます。

登記の手続きはいつまでが期限なのか

相続が発生してから特にいつまでに登記しなければならないという期限はないのですが、放置しているとさまざまなトラブルの原因となります。

当事者に所在不明の方などがいる場合,すぐに登記を含めた相続の手続をすることができず,相続分を確定することが困難となります。さらに,相続が2回以上重なると,誰が相続人となるのか,その調査だけで相当の時間が掛かり,相続登記の手続費用や手数料も高額となってしまいます。相続の手続に時間が掛かると,相続した不動産を売りたいと思ったときに,すぐに売ることができなくなるなど,思わぬ不利益を受けることがあります。
引用元:法務省:未来につなぐ相続登記

その他にも相続登記が遅れることによるデメリットがあります。
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相続登記手続き費用の相場ってどれくらい?自分でやるのと司法書士に依頼するのとで比較しました

では実際に相続登記手続きで、どのくらい費用がかかるのでしょうか?

以下のような条件でシミュレーションしてみましょう

相続する不動産 土地1筆と建物1棟
(評価額の合計1,000万円)
相続人 1人による単独相続

自分で申請する場合

登記事項証明書(1通)
オンラインで取得
500円
戸籍謄本(2通)
東京都千代田区
900円
住民票の写し(1通) 300円
登録免許税(評価額の0.4%) 40,000円
合計 41,700円

 

司法書士に任せる場合

司法書士に相続による所有権移転登記を委託する場合には、当然ですがその司法書士に支払う報酬がかかります。
その報酬額の相場は、地方によっても異なりますし、相続する不動産の数や相続人の数によっても変わります。
ただある程度の目安として、日本司法書士会連合会が全国の司法書士にアンケートしている結果が公表されています(7b6902377d481ddc7fe33ced428ce7cd.pdf)。
今回はこのアンケート結果をもとに、司法書士に支払う報酬額の相場を見てみましょう。

全体の平均値
北海道地区 49,751円
東北地区 51,467円
関東地区 59,210円
中部地区 60,428円
近畿地区 67,034円
中国地区 55,149円
四国地区 61,064円
九州地区 55,089円

※報酬アンケート結果一覧(http://www.shiho-shoshi.or.jp/cms/wp-content/uploads/2014/02/questionnaire.pdf)より抜粋
地域によってバラつきがありますが、だいたい5~6万円といったところですね。
意外に安い!と感じたのではないでしょうか?
先ほど説明した相続登記する不動産の確認や、戸籍謄本など必要書類を集める、登記申請書を法務局に提出する、といった作業をこの報酬でやってくれるのです。
したがって、司法書士に依頼する場合にかかる費用としては、下表のとおり。

報酬 60,000円
戸籍謄本(2通)
東京都千代田区
900円
住民票の写し(1通) 300円
登録免許税(評価額の0.4%) 40,000円
合計 101,200円

ということで比較してみると、

自分で手続きする 41,700円
司法書士に依頼する 101,200円
差額 59,500円

差額の59,500円を高いと感じるか安いと感じるかは人それぞれでしょうが、煩雑な登記手続きを丸投げできるというメリットは非常に大きいのではないでしょうか?

まとめ~司法書士に登記手続きを依頼するメリットは多い

もちろん司法書士は日頃から登記手続きを生業としているプロですから、ミスも少なくスピーディーに登記が完了します。
実際に不動産などの相続が発生したら、遺産分割協議の段階から相続専門の司法書士や税理士などに依頼するというケースがほとんどです。

ちなみに私のような不動産鑑定士も、相続した不動産の評価や分割方法についてアドバイスさせていただくことがありますよ。

このように各分野のプロフェッショナルの力を借りることで、誰しもが不慣れな相続についての面倒ごとをスムーズに解決できるのです。

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