相続の遺産分割協議っていつまで?間に合わない場合は法定相続分で

相続&不動産の基礎知識

親が亡くなって相続というときに、まずぶつかる問題はどのように遺産を分けるか?という点です。

この遺産の分割方法を相談することを、専門用語で遺産分割協議と呼びます。
この遺産分割協議はどのように行うのでしょうか?

また相続税の申告期限は亡くなった日の翌日から10ヶ月後です。
もし遺産分割協議が申告期限に間に合わないときは、どうすれば良いのか?

詳しく解説していきましょう。

遺産分割ってどういうこと?

遺産分割とは亡くなった人(被相続人)の財産を、どのような割合で相続を受ける人(相続人)に配分するかを決めること。

遺産分割によって相続人ごとに貰える財産の額が決まり、さらに各相続人が負担する相続税が決まります。

遺産分割は相続手続きで一番重要なポイントであり、一番モメるポイントでもあるので、丁寧に説明していきましょう。

遺産分割の対象となる故人の財産は?

相続するものとして遺産分割の対象となる財産は、現金や不動産だけではありません。

  • 預貯金
  • 有価証券
  • 貴金属・宝石
  • 書画・骨董
  • 電話加入権

このように換金性があるような財産も対象になるのです。
したがって遺産分割の協議を始める前段階として、相続するすべての財産を洗い出す必要がありますね。
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遺産分割協議の期限や時効はあるの?

前述のとおり遺産分割協議は親族間でもモメるケースが多く、話し合いが長引くことも少なくありません。
そこで遺産分割協議を完了するまでの期限ってあるの?という疑問が湧いてきます。

先に結論をいえば、法的には遺産分割協議をいつまでに完了しなければならないという期限はありません

また遺産の取り分を他の相続人に請求する権利(遺産分割請求権)には時効がないので、遺産分割協議が進まないまま何年経ったとしても、権利が消滅することもありません。

ただ相続税を申告して納付する期限は、相続開始を知った日(通常は亡くなった日)の翌日から10ヶ月以内と決まっています。
これは遺産分割協議が完了している/していないに関わらずということです。

したがって相続税の申告に遺産分割協議が間に合わなかったとしたら、とりあえず法定相続分で相続税の計算をして納付するということになります。

そのあと遺産分割協議を続けて、分割割合に変更があれば税負担率も変わりますから、その差額を調整するといった面倒な作業が必要になるのです。

したがって遺産分割協議を早めに済ませたほうが良いというのは間違いないですね。

ちなみに相続の手続きで期限が設けられているのは、以下のようなケースです。

  • 亡くなった人の借金を相続したくない(相続放棄・限定承認)
  • 自分が受け取る財産が少ないので正当な取り分を請求したい(遺留分減殺請求)

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それぞれ別記事で詳しく説明してありますので、興味のある方はご覧ください。

遺産分割の方法は遺言の有無によって異なる

遺産分割の基本は民法で定められた法定相続分

ひとくちに遺産分割をすると言っても、まったく制限なく自由に分割できるというわけではありません。
遺産分割の基本は、民法に定められた割合いわゆる法定相続分で分割することです。

故人の遺言がない場合や遺産分割協議でまとまらない場合などには、この法定相続分で分割されます。
例えば夫がなくなって、妻と子ども2人が相続する場合は以下のような割合になります。
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妻:二分の一 子ども:四分の一づつ

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またこの例ですでに妻が亡くなっていた場合は子どもが二分の一づつ相続する、妻・子どもともいない場合は夫の父母や兄弟姉妹が相続するといったケースもありますね。

被相続人(亡くなった方)の遺言による指定分割

遺言により相続財産の分割方法が指定されている場合は、その指定どおりに分割することになります。

ただし「皆仲良く穏便に分けること」などという曖昧な表現では、分割方法が指定されているとは言えません。
例えば「自宅の家屋や土地は長男に、現金は長女と次男で半分づつ」など、具体的に記載されているほうがトラブルになりにくいでしょう。

遺産分割については、この遺言による指定分割が最も優先されますので、先ほどの法定相続分で解決できない以下のようなケースで使われることがあります。

配偶者(妻)が内縁の場合

故人の妻が婚姻届を出していない内縁関係の場合は、法的には配偶者として認められません。
したがって法定相続分でも配偶者としての取り分は与えられないことになります。

ただし遺言で「○○(内縁の妻)に全財産の二分の一を相続させること」といった記述があれば、内縁の妻でも取り分が保護されることになります。

また再婚相手の連れ子に自分の遺産を残したいときは、遺言書で遺贈する旨を書く必要があります。
この場合相続ではなく、遺贈である点に注意してください(詳しくはこちら)。

相続権のない第三者や孫に相続させたいとき

  • 親切に介護をしてくれたヘルパーさんに、いくらか遺してあげたい
  • 孫の将来のために財産を遺しておきたい

このように本来相続権のない第三者や孫、兄弟姉妹に相続させたいケースでも、遺言による指定分割が使われます。

相続人が取り分に納得できない場合は、遺留分減殺請求ができる

ただ遺言による指定分割がすべてに優先すると言っても、あまりに極端な配分は困ってしまいますね。
例えば「愛人にすべての財産を相続させる」といったようなケースです。
このようなケースでは、本来相続権のある配偶者や子どもは一定の取り分を請求すること、いわゆる遺留分減殺請求ができます。

例えば上の愛人のケースで、妻と子ども2人がいた場合、相続する権利がある割合(遺留分)は以下のとおり。

  • 全体の二分の一が遺留分となる。
  • したがって各人の取り分は妻二分の一、子どもは各人四分の一づつ。

ここに図
法定相続分に比べれば半分になってしまいますが、最低限もらえる分として確保できます。

ただこの遺留分は何もしないでもらえるわけではなく、相続開始を知った日(通常は亡くなった日)から一年以内に請求しなければなりません。

遺言がない場合は、相続人の協議によって決める協議分割

故人による遺言がない場合は、相続権のある相続人全員での協議(遺産分割協議)を行い、各人の配分を決めていくことになります。

この遺産分割協議は非常に難しく込み入った話になります。

例えば相続する財産が現金や預貯金だけでなく不動産も含まれる場合、その不動産の評価額にもとづいて全体の配分を決めなければなりません。

相続人だけでは難しい作業になるので、専門の税理士などの専門家を交えて協議を進めたほうが無難でしょうね。
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相続人の間で協議がまとまらない場合は家庭裁判所による調停・審判分割

遺産分割協議で話がまとまらない場合は、家庭裁判所による調停となります。

遺産分割調停とは

遺産分割調停とは、遺産分割協議がまとまらない場合に、家庭裁判所の場を利用してまとめてもらうというもの。
調停を始めるに当たっては、相続人が他の相続人を相手方として、遺産分割調停事件として家庭裁判所に申し立てを行います。

調停の申し立てをする際に、費用として被相続人(亡くなった人)一人につき1,200円がかかります。
遺産分割調停では、裁判官が相続人の言い分を聞いたり必要な書類を揃えたりして、解決策を助言していきます。

この調停では裁判官はあくまでも助言をするだけなので、強制的に分割を進めるといったことはありません。
ちなみに私のような不動産鑑定士も、この家庭裁判所での遺産分割調停に参加するケースもあります。
相続財産に不動産が含まれる場合に、その価格を評価して分割案を提示するなどの仕事に携わったりもするのですよ。

この遺産分割調停でも話し合いが決裂してしまったときは、自動的に審判という手続きに移ります。

遺産分割での審判の効力とは?

遺産分割調停で不調に終わった場合は、引き続き家庭裁判所による審判に移ります。
この審判はいわゆる裁判と同じようなもので、裁判官が相続人の意見や調査資料をもとに遺産分割の審判を下します。
この審判は判決と同様に法的な強制力があるもので、これに応じない場合は強制執行などの措置がとられます。
この審判に不服がある場合は、さらに上の高等裁判所に不服申立てをおこなうことになります。
参考:裁判所|遺産分割調停
http://isan-soudan.org/family-court.php

まとめ~遺産分割協議は当事者だけでは難しい

これまで見てきた通り、遺産分割協議は非常に難しい作業です。
まず相続財産をすべて金額面を含めて洗い出しをしなければいけませんし、その相続財産を相続人間で不満がないように分ける作業も大変です。
この遺産分割協議で、それまで仲の良かった親族たちが険悪な関係になってしまい、その後の付き合いが途絶えてしまうというケースも多いですね。
したがってこの遺産分割協議では相続人だけでの話し合いは避け、専門知識を持つ第三者(税理士・弁護士など)に立ち会ってもらいながら行うのをおすすめします。
最近では相続税の申告手続きまで代行してくれるサービスもあります。
そのような専門サービスを利用することで、余計な手間や争いを避けることができますよ。

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