親のマンションを相続したは良いけれど、住む予定がないからどうしよう……
こういうご相談を受けることがあります。
相続した時点で子ども達は皆持ち家があり、相続したマンションに住む必要がないケースは多いですね。
そんなときの選択肢としては、
- 売って利益を分配する
- 売らずに賃貸物件として活用する
という2つの選択肢があります。
売却と賃貸のどちらがメリットがあるのか?
考えてみましょう。
そう思ったら、無料の一括査定サイトで相場を調べてみましょう。
複数の不動産会社から査定してもらうことで、相続したマンションにどのくらいの価値があるのかカンタンにわかりますよ。
売るか貸すかを判断するフローチャート
マンションを売るべきか?貸すべきか?
迷っているあなたのために、簡単なフローチャートを用意しました。
この診断結果をもとに、以下の記事を読んでみてください。
まずはどのくらいの売却価格・賃料が見込めるかを調べる
なんとなくの判断で賃貸した方が儲かりそうと始めるのはリスクが高いです。
なるべく客観的な視点で、以下のようなポイントでマンションを評価してみましょう。
- 市場性(需要はあるのか?)
- 個別的要因(そのマンションは売れる?貸せる?)
それぞれ詳しく説明しますね。
募集広告を見て市場性を判断する
まずはそのマンションが存している地域で、賃貸のニーズがあるかを調べます。
SUUMO等の不動産情報サイトで、その地域の賃貸物件の募集数・募集賃料などをチェックしてみてください。
あまりに募集数が少なかったり、賃料が低い場合には需要がないと見てよいでしょう。
また募集数が多かったとしても、相続したマンションと異なる間取りが多いときも注意が必要です。
例えば学生・単身者向けのワンルームがほとんどの地域で、ファミリー向け3LDKの物件を賃貸しても、需要は少ないかもしれません。
このように賃貸の需要が少ないと判断されるときは、早めに売却を検討しましょう。
マンションの管理規約などで個別的要因を調べる
その地域の需要が分かったら、次にそのマンション固有の個別的要因を調べてみます。
- 間取り・面積
- 階数
- 築年数
- エレベーターの有無
- 日当たり
- 駅までの距離
- バス停までの距離
- 小中学校はどこか?
- 車や電車の騒音
これらは一部ですが、このような要因を総合的に判断して、そのマンションの競争力を考えます。
加えて見てほしいのが、マンションの管理規約や大規模修繕工事の資料です。
管理規約なんてどこにあるの?と思われるかもしれませんが、通常であれば管理事務所に備え付けられていて、自由に閲覧できます。
[st-mybox title=”ひとくちコラム” fontawesome=”fa-pencil-square-o” color=”#039BE5″ bordercolor=”#74d0fd” bgcolor=”#e8f7ff” borderwidth=”0″ borderradius=”5″ titleweight=”bold”]
ちなみに管理規約を閲覧できるようにする義務は、建物の区分所有等に関する法律第33条に規定されていることです。
第三十三条 規約は、管理者が保管しなければならない。ただし、管理者がないときは、建物を使用している区分所有者又はその代理人で規約又は集会の決議で定めるものが保管しなければならない。 2 前項の規定により規約を保管する者は、利害関係人の請求があつたときは、正当な理由がある場合を除いて、規約の閲覧(規約が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したものの当該規約の保管場所における閲覧)を拒んではならない。 3 規約の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。
引用元:建物の区分所有等に関する法律
これができていないのならば、そのマンションの管理体制に問題があるという証拠にもなりますね。
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マンションの管理規約には、重要な情報が記載されています。
- 管理費
- 修繕積立金
- 理事の役割や任期
- ペット可かどうか
管理費や修繕積立金は毎月発生する費用です。
見込める家賃収入と、これらの費用のバランスを考えておきましょう。
またマンションの場合、大規模修繕工事の履歴も大事なポイントです。
定期的な工事がされていない場合は、マンション全体にトラブルが発生するリスクが高くなります。
一番簡単なのは、不動産業者に査定してもらうこと
とはいえ、こういった作業を一般の人が行うというのは無理がありますね。
不動産の専門家でないと、手に負えない面があります。
そこでおすすめしたいのが、マンションの売却価格を一括査定してくれるサービスを使うこと。
複数の不動産業者に一括で査定を依頼することができるのです。
ここではマンションの売却価格だけでなく、賃料の査定もできるサービスをご紹介しますね。
売却価格&賃料を同時に査定できるサイト
対象エリア | 全国 |
---|---|
物件種別 | マンション 一戸建て 土地 その他 |
提携会社数 | 1,400社 |
同時依頼数 | 6社 |
運営会社 | リビン・テクノロジーズ株式会社 |
以前はスマイスターという名前だったので、そちらの名前に馴染みがある人も多いでしょう。
リビンマッチの特徴は、売却だけでなく賃料査定も同時に行えること。
提携会社も全国1,400社以上あるので、幅広い地域に対応しています。
また買取や任意売却といった特別な売却方法にも対応しているので、いろいろな事情を抱えた人にもオススメできますね。
対象エリア | 全国 |
---|---|
物件種別 | マンション 一戸建て 土地 |
提携会社数 | 2,500店舗 |
同時依頼数 | 売却6社 賃貸3社 |
運営会社 | マンションリサーチ株式会社 |
マンションナビと違うところは、マンションだけでなく一戸建て・土地の査定も行ってくれるところ。
マンション以外にも相続した不動産の査定をしたいというニーズに応えてくれますね。
マンションナビと同様に賃料査定も同時に依頼できます。
賃料のみを査定するサイト
対象エリア | 東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県 |
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物件種別 | 分譲マンション 一戸建て 一棟アパート・マンション |
提携会社数 | 約200店舗 |
同時依頼数 | 賃貸6社 |
運営会社 | 株式会社エイムプレイス |
そんなときは賃貸でどれくらいの収入が見込めるのか?リサーチしてみましょう。
このマンション貸す.comは賃料に特化した査定サービスなので、相続したマンションがどれくらいの賃料で貸せるのかがカンタンに分かります。
分譲マンションだけでなく一戸建て・一棟マンション・アパートにも対応していますよ。
売却・賃貸のメリット&デメリットを比較してみよう
売るか貸すかを決める時、単純に経済的メリットだけで判断するのは危険です。
その他のメリット・デメリットを総合的に判断して決断しましょう。
売る | 貸す | |
---|---|---|
メリット | 現金で相続分を分配できる 管理する必要がなくなる 次世代に負担がかからない |
定期的な賃料収入が入ってくる 相続税が安くなる |
デメリット | 譲渡税がかかる 売却価格が不当に安くなることも |
空室になると費用だけがかかる 管理の手間 |
以下で詳しく解説していきますね。
売却するメリット・デメリット
相続したマンションを売却するメリット・デメリットは以下の通り。
メリット
現金で相続分を分配できる
相続したときの遺産分割する割合は、とても悩ましいものです。
できれば平等にして、親族間の争いは避けたいですね。
自由に分割できる現金ならともかく、分割しにくい不動産はなおさら難しいです。
そこで不動産の遺産分割でオススメなのが、換価分割です。
相続した不動産を売却して現金化することで、全ての相続人にキレイに分配できるというメリットがありますよ。
管理する必要がなくなる
相続したマンションを賃貸に回すと、ほったらかしというワケにはいきません。
大家として管理義務が発生します。
管理会社に委託するにしても、契約関係などで大家自身がやらなければいけないことが必ずありますね。
そんな管理の手間が煩わしいのなら、いっそのこと手放した方が良いという考え方もあります。
次世代に負担がかからない
マンションを賃貸にすると、
- 固定資産税
- 管理費・修繕積立金
という費用負担が発生します。
固定資産税の負担はそれほどでもないですが、問題となるのが管理費・修繕積立金。
マンションは築年数が経つにつれて、管理費・修繕積立金が高くなる傾向にあります。
自分の代だけならともかく、次の子どもの代まで管理を受け継ぐと相当な負担になりますね。
そういった将来の負担を無くするという意味でも、売却するという決断も必要でしょう。
デメリット
譲渡税がかかる
マンションを売却して現金化しても、全額が手元に残るわけではありません。
売却益に対して譲渡税(所得税・住民税)がかかります。
不動産の売却価格は高額なので、発生する譲渡税の負担も重くなりがち。
ただ居住用不動産の売買については、譲渡税の軽減措置や特例がいくつかあります。
- マイホーム特例
- 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
- 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
- 10年超所有軽減税率の特例など
必ずこれらの特例の要件を押さえておいて、なるべく損をしないように活用しましょう。
売却価格が不当に安くなることも
納税資金が足りないから、早く売りたいと考えている人は注意してください。
このように売り主が売却を急いでいるときは、買主に足下を見られて不当に安い価格で売ってしまいがちです。
これを業界用語で売り急ぎといいます。
相続に伴う不動産の売買では、この売り急ぎになってしまう場合が多いのですね。
納税資金は生命保険金の控除枠などを上手に活用して、不動産の売却代金に頼らないようにする生前対策が必要でしょう。
賃貸のメリット・デメリット
相続したマンションを賃貸に回すメリット・デメリットを挙げてみましょう。
メリット
定期的な賃料収入が入ってくる
賃貸のニーズが高いところであれば、それなりの賃料収入が見込めます。
特に3LDKなどのファミリータイプ住戸の場合、賃貸になっている物件の数が少ないので稀少性がありますね。
いったん入居者が決まると、比較的長く借りてくれるという側面もあります。
賃貸物件のニーズを左右するのは、何といっても立地。
- 駅から近い
- 大工場などの職場に近い
- 有名な小学校の学区内にある
といった立地であれば、かなり期待できるでしょう。
相続税が安くなる
いったん相続したマンションでも、相続した人が亡くなればまた相続が発生します。
次の世代の税負担を軽くするという意味で、マンションを賃貸に回すというのはメリットがありますね。
なぜならマンションを賃貸物件にすると、相続税の評価額が大幅にさがるからです。
賃貸されているマンションは、評価上の分類では貸家建付地(かしやたてつけち)と呼びます。
貸家建付地になると、土地部分の評価額が大幅に下がります。
貸家建付地の価額 = 自用地とした場合の価額 - 自用地とした場合の価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合
例えば
- 土地の評価額:1,000万円
- 借地権割合:60%
- マンションの一室をまるごと賃貸している
というケースで計算してみると、
[st-mybox title=”計算式” fontawesome=”fa-calculator” color=”#74d0fd” bgcolor=”#e8f7ff” borderwidth=”0″ borderradius=”5″ titleweight=”bold”] 1,000万円-1,000万円×0.6×0.3×1.0=820万円[/st-mybox]
という計算になりますね。
土地の評価額が下がれば、相続税の負担が軽くなるというメリットがあります。
いわゆる相続税対策としてのアパマン経営も、この理屈で成り立っているのです。
デメリット
空室になると費用だけがかかる
まず相続した古い分譲マンションを賃貸物件にするためには、相応のリフォームが必要です。
どのくらいの工事費がかかるのか?
見積りをとっておきましょう。
>空き家を賃貸物件に転用する|リフォーム工事のトラブルとは⁉️
それ以外にも維持管理や修繕のためのランニングコストが必要です。
空室であってもこれらの費用はかかりますから、注意しておきたいですね。
管理の手間
売るときの流れ・費用・注意点
マンションを売るときの流れ
不動産会社に査定を依頼する
仲介してもらう不動産会社と媒介契約を結ぶ
募集広告を出す
購入希望者に内見してもらう
売買契約を結ぶ
物件の引き渡し
家を売るときの流れは上図のとおりです。
あなたの家がスムーズに売れるかどうかは、仲介する不動産会社の担当者の能力にかかってきます。
ですからなるべく複数の不動産会社の担当者と実際に会って、印象の良い人を選びたいですね。
マンションを売るときに発生する費用
売るときのデメリットのところで譲渡税について触れましたが、家を売るときにかかる費用はそれだけではありません。
必ずかかる費用として、
- 仲介手数料
- 印紙税
の2つが挙げられます。
また場合によって、
- 建物の解体費用
- 住宅ローン残債の支払い
- 登録免許税
- 司法書士報酬
といった費用がかかります。
売却したときの所有権移転登記は、通常は契約締結後に買主側が行います。
したがって登録免許税・司法書士報酬も、売主が負担することはありません。
ただ相続による所有権移転登記や抵当権抹消登記は売主側の負担になりますので、場合によっては登録免許税などが発生する可能性がありますね。
[st-mybox title=”登録免許税は譲渡税の節税になる” fontawesome=”fa-info-circle” color=”#e54d03″ bgcolor=”#fff0e8″ borderwidth=”0″ borderradius=”5″ titleweight=”bold”]ちなみに相続による所有権移転登記で発生した登録免許税は、譲渡税の計算のときに取得費として差し引くことができます。[/st-mybox]
相続したマンションを売るときの注意点
もし相続したマンションを売りたいと決断したら、なるべく早く不動産会社を見つけて売るというのが鉄則です。
売却代金を相続税の納付に充てる場合は、亡くなってから10ヶ月後(申告期限)に間に合わせる必要があります。
それほど急がない場合でも、申告期限から3年以内に売却したいですね。
納付した相続税額の一部を、譲渡税の計算上の取得費に充てることができますから。
貸すときの流れ・費用・注意点
マンションを貸すときの流れ
仲介する不動産会社を探す
管理形態を決める(自主か?委託か?)
委託管理なら管理会社と賃貸管理委託契約をする
購入希望者に内見してもらう
入居者募集広告を出す
希望者の内見
入居者と賃貸借契約を結ぶ
マンションを貸すときの基本的な流れは、上図のとおりです。
ただ家を貸すとなると、
- 毎月の家賃請求
- 敷金の管理
- 清掃などの日常的な管理
- 破損部分の補修
- 入居者からのクレーム対応
などの管理業務が発生します。
管理形態には
- 自主管理(自分ですべて行う)
- 委託管理(専門の管理会社へ委託する)
の2つがありますが、ほとんどのケースでは委託管理することになるでしょう。
ただ委託管理となると、毎月の委託手数料が発生するので注意しておきたいですね。
一般的には家賃収入の5%程度と言われています。 ただ小規模なアパートになると、この割合が上がる傾向がありますね。
賃貸にかかる費用
マンションを賃貸にするとき必ずかかる費用として、
- リフォーム・ハウスクリーニング費用
- 管理費・修繕積立金
- 固定資産税
が挙げられます。
リフォーム・ハウスクリーニング費用は一時的な出費ですが、その他は恒常的に発生する費用ですね。
特に築年数が古いマンションの場合は、管理費・修繕積立金が高額になるケースが多いです。
その出費に見合う賃料収入が得られるのか、検討しておきましょう。
また賃貸経営に関する費用として、
- 管理委託手数料
- 契約手続きにかかる仲介手数料
- 賃貸借契約更新の手数料
などがあります。
賃貸経営というと賃料収入が安定的に入ってくるというイメージですが、意外に出費が多いことが分かりますね。
マンションを貸すときの注意点
マンションを貸すときには、本当にそのマンションに賃貸ニーズがあるのかを確認しておきましょう。
募集広告を出したけどまったく希望者が来ない、となったら大損ですからね。
また入居が決まった後は、賃貸借契約の期間についても考えておきたいですね。
- 普通借家契約(一般的な契約)
- 定期借家契約(期間を定める契約)
一般的には普通借家契約で行うことになりますが、以下のような場合には定期借家契約を検討してみても良いでしょう。
- 近い将来に自分が住みたいと考えている
- 悪質な入居者が来ないか心配
普通借家契約だと通常は2年間の契約を結び、2年後に更新するという流れになります。
しかしこの更新は入居者の意向が優先されるので、オーナーが入居者を退去させたいと考えても、入居者が住み続けたいと思ったら原則として更新されます。
日本の借地借家法は借主の保護が手厚いので、悪質な入居者が居座るケースが多いのですね。
オーナーが退去させるには、裁判で正当な事由ありと認めてもらわなければなりません。
反対に定期借家契約では、当初に定められた契約期間が終了すれば退去することが前提になっています。
そのまま貸しておきたいなら、再度契約を更新すれば済みます。
現在ではあまり普及していない定期借家契約ですが、今後は増えてくることも予想されます。
もし将来そのマンションに自分たちが住むことを予定していたり、悪質な入居者を排除したいのなら、定期借家契約について不動産会社と相談してみましょう。
売るか貸すかを決断する前に、総合的に判断する必要がある
これまでみてきたように、売却するにしても賃貸するにしても、それぞれメリット・デメリットがあります。
狭い視野で判断するのではなく、第三者のアドバイスを受けながら客観的な視点で判断したいものですね。
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