相続財産となる土地の評価として一般的なのは、相続税路線価に面積を乗じるものです。
[st-mybox title=”計算式” fontawesome=”fa-calculator” color=”#74d0fd” bgcolor=”#e8f7ff” borderwidth=”0″ borderradius=”5″ titleweight=”bold”]
路線価×土地の面積 = 財産評価額
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この路線価で求める方法は誰でもできる、簡易的な方法です。
しかしその土地独自の個別性を反映していないというデメリットもあります。
実際の土地は個別的な要因が組み合わさって、その価値が評価されています。
したがって路線価では評価額が高くても、個別的要因を加味すると評価が下がる(評価減)となるケースは相当数あります。
評価減になれば相続税の節税対策につながりますから、ちゃんと把握しておきたいですね。
ここでは、そんな評価減の事例を挙げていきたいと思います。
土地の形状や環境による評価減
土地の形状や環境によって、その土地が有効利用できるか否かが変化します。
有効利用できない土地は、評価減の対象となります。
そのような例を見てみましょう。
旗竿地
都市部などでよく見かけるのが、道路から奥まったところに建っている住宅。
道路と接する部分は細い通路になっています。
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このような土地を通称・旗竿地と呼びます。
旗竿地は通路部分は建物が建てられず、有効利用ができません。
したがって旗竿地は、通路部分の面積に応じて評価減をします。
旗竿地の具体的な計算例はこちら
ちなみに旗竿地の通路部分は、有効幅が2m以上必要です。
幅2m未満だと、建物を建築できない土地(無道路地)となります。(参考:建築基準法第43条)
前面の道路幅が4m未満の土地
建築基準法第42条により、建物を建てるための敷地は幅4m以上の道路に接してなければいけません。
しかし現実には、幅4m未満の道路なんていくらでもありますよね。
特に昔からの街区では、その傾向が強いです。
そのような道路に面した土地に建物を建てようとするときは、道路幅員が4mになるまで敷地を後退する必要があります。
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後退した部分は道路となるので、建物は建てられないのです。
この状態をセットバックと呼びます。
セットバックがある土地の評価の計算例はこちら
無道路地
先ほど旗竿地の項でも触れましたが、道路に接する部分が2m未満の土地には建物は建てられません。
まったく道路に接していない土地も同様です。
このような土地を無道路地と呼びます。
無道路地の評価減は、有効に接道させるための費用を勘案して求めます。
無道路地の評価例はコチラ
不整形地
土地の形はキレイな長方形であることが理想です。
長方形だと建物が建てやすく、有効利用しやすいからですね。
ただ現実にはそのような整形地ばかりではなく、形がいびつな土地が多いですね。
そのような土地を不整形地と呼びます。
不整形地は使いにくいので、評価減の対象となります。
がけ地・傾斜地
建物の敷地として利用するには、なるべく平坦な土地が理想的です。
ただ傾斜の多い地域では、どうしても崖や傾斜部分を含む土地が多いです。
このような土地も、有効利用できない部分の評価をマイナスします。
高圧線が通っている土地
基本的にその土地に建てられる建物高さの上限は、都市計画法に定められた用途地域や建築基準法の斜線制限などで決まります。
しかし土地上に高圧線が通っている場合、物理的に建てられる高さが制限されてしまいますよね。
したがってこのような高圧線下の土地についても評価減の対象となります。
その他にも以下のような土地は、評価減の対象となる可能性があります。
- 線路沿いの土地
- 道路と高低差のある土地
- 忌み地(墓地などが隣接している)
- 神社や祠のある土地
- 縄延び・縄縮みがある
[st-mybox title=”縄延び・縄縮みとは?” fontawesome=”fa-info-circle” color=”#e54d03″ bgcolor=”#fff0e8″ borderwidth=”0″ borderradius=”5″ titleweight=”bold”]
縄延び・縄縮みとは、登記上の面積と実測面積に差異がある状態を言います。
昔の土地は測量精度がイマイチで、もう一度測量してみるとかなり面積が違うということがあります。
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賃貸アパート・賃貸マンションなどの敷地は大幅に評価減される
- アパート
- 賃貸マンション
- 借家の一戸建て
土地上にこのような種類の建物が建っているのなら、大きい節税効果が期待できます。
土地上の建物が第三者に賃貸されている状態を、貸家建付地と呼びます。
貸家建付地の評価では以下のように、自用地に借地権割合や借家権割合をマイナスできるので、大幅な評価減になるのですね。
貸家建付地の価額 = 自用地とした場合の価額 - 自用地とした場合の価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合
この評価方法を利用したのが、アパート経営などによる節税対策です。
ただアパート経営にも相応のリスクがありますから、安易に始めるのはオススメしません。
また、貸家がOKなら貸し駐車場でも評価減できるの?という質問を受けることがあります。
結論として貸し駐車場にしている土地は貸家建付地とはなりません。
なぜなら貸し駐車場は建物が建っていないので、借地権や借家権が発生していないから。
したがって貸し駐車場は、更地として評価されます。
[st-mybox title=”更地・建付地の違い” fontawesome=”fa-info-circle” color=”#e54d03″ bgcolor=”#fff0e8″ borderwidth=”0″ borderradius=”5″ titleweight=”bold”]
建物の建っている土地を建付地、建っていない土地を更地と呼びます。
建付地は現状の建物が建っていますから、更地と異なり自由な利用が制限されています。
だから建付地の評価額は、更地よりも低くなるのです。
建付地のうち、土地上の建物を他人に貸している貸家建付地は、さらに利用が制限されている状態。
よって普通の建付地よりも、さらに評価額が低くなるという理屈なのです。
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近隣に比べて広めの土地は「地積規模の大きな宅地」として評価される
都市部の住宅地域でも、ときどき広い農地があるケースがありますね。
近隣の標準的な土地と比較して面積が過大に広い土地を、地積規模の大きな宅地といい、評価減の対象となります。
地積規模の大きな宅地は以前は広大地と呼ばれていましたが、平成30年の税制改正により名称が改められました。
評価方法なども大きく変わりましたので、心当たりのある方はチェックしてください。
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